全人格労働という過酷な状況に追い込まれる
「あなたは何のために仕事をしていますか?」と質問されたとき、「仕事が好きだから」「生活のため」「老後のため」「国民の三大義務を果たすため」と、回答は人それぞれです。
しかし、「仕事が好きだから」と答えた人でさえ、「仕事中心で私生活はどうでもいい」、と思っている人は少ないでしょう。
そして、それに関連することとして、「全人格労働」という言葉があります。
この全人格労働とは、賃金やポストの上昇など、仕事におけるメリットがないにもかかわらず、ノルマやプレッシャー、解雇の恐怖心を突きつけることにより、過重労働を強いることを意味します。
全人格労働という言葉は、産業医の阿部眞雄さんが2008年に著した『快適職場のつくり方 – イジメ、ストレス、メンタル不全をただす』という単行本の中で使用した造語ですが、実際に労働者を仕事漬けにする会社が増えていることから一般的に使われる言葉となりつつある状態です。
日本で全人格労働が広まりつつある原因
戦後復興、高度経済成長、そして、昭和のバブルというように、少し前までは働くことが当たり前であり、長時間働いてそれに見合った収入やポストを得ていました。
バブルの時は、「売り手市場」と言って、人手不足で就活生や求職者が有利の状態だったので、仕事は選び放題に近かった程です。
しかし、バブルが弾けた1991年(平成3年)3月を境に状況は一変し、不況によって就職氷河期と呼ばれるほどの就職難な状態になります。
「労働者 < 使用者」という力関係が鮮明になり、労働者が会社の無理な指示を聞かざるを得なくなりました。
さらに、「不況によって平均賃金が低下」「転職しようとしても次の仕事を見つけにくい」「団塊の世代ジュニアと呼ばれる第二次ベビーブームに生まれた人が多くてポストがない」などの働くことによる見返りもなくなります。
最近では、パワハラ、セクハラの他にもマタハラ、モラハラというように複数のハラスメントがあり、職場でイジメ的な行為も行われています。
また、企業も不況に耐えるため、雇用する労働者数を少なくし、一人の労働量を多くしようとしました。
結果、労働時間と労働量のみ増え、賃金もポストも休みもなく、辞めたくても辞められないという状況に至るのです。
これが、今、日本で全人格労働が増えている原因です。
全人格労働が続くとどうなる?
- 長時間労働により、日々のプライベート時間や休日がなくなる
- 精神的ストレスによりうつ病となる
- 女性の場合、結婚・妊娠・出産ができなくなる
全人格労働による影響としては主に上記のことが考えられます。
仕事漬けにされるのでプライベートの時間が無くなるのは確実で、ひどいと精神的に追い込まれてうつ病になります。
さらに、女性は結婚・妊娠・出産できなくなる可能性もあり、将来的に後悔することになりかねません。
全人格労働の相談・対策
仕事が好きで自ら進んで仕事漬けの状態になっている人は全人格労働ではないので問題ありませんが、それ以外の人は、遅かれ早かれ押し付けられる仕事に耐えられなくなります。
ですから、うつ病になったり、結婚・妊娠・出産できなくなってから後悔するのではなく、その前に行動を起こさなければなりません。
しかし、どうすればいいかわからないという人がほとんどだと思うので、全人格労働の相談先や対策方法について説明したいと思います。
まず、全人格労働は労働者の意に反して強制的に労働させることなので、労働基準法に違反している可能性が高く、場合によっては労働基準法で最も罰則が厳しい5条の「強制労働の禁止」に抵触している可能性もあります。
したがって、「法定労働時間を守っているか?」「割増賃金を守っているか?」「暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制していないか?」といった違反行為の有無を確認してください。
次に、事業所の地域の労働基準監督署、または、総合労働相談コーナーに相談してください。
それぞれのキーワードを検索すると、該当ページが上位表示されるので、そこから地域を探して電話を掛けましょう。
あとは、適切なアドバイスをしてもらえるので、それに従ったり、参考にしてください。
なお、労働者が上記の機関等に訴えたとしても、使用者はそれを理由に解雇したり、不利に扱うことを禁止されているので安心です。
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