労働基準法における賃金とは?非常時払も可能
労働者は働き、会社はその報酬として賃金を支払い、そして、労働者は受け取った賃金を生活費に充てるため、賃金は非常に重要な存在です。
そのため、労働基準法で賃金について定め、保護しています。
賃金(労働基準法11条)
賃金とは、賃金、給料、手当その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
これを読むと、会社から労働者に支払われる何もかもが賃金のように思えますが、例外として、恩恵的な給付(結婚祝金・災害見舞金など)、福利厚生的な給付(社宅の貸与・給食など)、仕事に関する給付(制服・作業衣・出張旅費など)は賃金ではありません。
ただし、注意が必要で、恩恵的な給付や福利厚生的な給付であっても、労働協約、就業規則、労働契約等によって、あらかじめ支給条件が明確なものについては賃金となります。
現物給与・実物給与で支払えるか?
現物給与というと、賃金の代わりに自社製品を渡すイメージがありますが、電車の通勤定期券やマイカー通勤のガソリン、食事なども現物給与です。
このように、賃金を通貨以外で支払うためには、法令が存在するか労働協約に定める必要があります。
労働協約とは、労働組合と使用者が書面に署名または記名押印した決まりなので、法律がなく会社に労働組合も存在していないと現物給与はできません。
賃金支払いの5原則
労働基準法では、経済的弱者である労働者を保護するため、賃金の支払い方法について、次のように定めています。
賃金の支払(労働基準法24条)
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。毎月1回以上、一定の期日を定めて、支払わなければならない。
労働者からすれば当然ですが、法律にしないと守らない会社があるので、このように定められているのです。
ただし、次の例外があります。
労働者はお金がなければ食料も家賃も払えないので、現金払いが基本です。ただし、上でも説明した通り、法令か労働協約により現物給与が認められています。また、退職手当は労働者の同意を得て小切手等で支払えるほか、労働者の同意を得れば給料を口座振込にできます。
賃金は直接労働者に支払わなければならず、代理人に支払うことは禁止されています。したがって、未成年者の賃金を親に支払うことも違法です。ただし、法律上は代理人はダメでも使者なら良いことになっており、この使者が曖昧な存在のため、自分で使者と名乗れば使者となってしまいます。トラブルを避けるためにも、本人に支払うのが一番ですが、今は銀行振込が基本なので、それほど大きな問題ではないでしょう。
賃金は全額払いのが基本ですが、法令により、所得税・住民税・雇用保険料・健康保険料・厚生年金保険料は給料から天引きできます。また、労使協定を締結すれば、組合費や社内預金等も例外として認められます。
2ヶ月、3ヶ月、給料が支払われないと労働者は生活できないので、毎月1回以上は給料日が必要です。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与(ボーナス)、1ヶ月を超える期間について支給される精勤手当や勤続手当などは、毎月でなくても良いとされています。
給料日は毎月25日のように特定しておく必要があります。したがって、毎月第4金曜日とすると日にちが変動するため、特定したとは認められません。
非常時払とは?
上記の通り、給料日はあらかじめ決まっており、その日に支払われるのを待つしかありません。
ただし、労働者または労働者の収入によって生計を維持する者に次のいずれかが生じた場合は、給料日前でも、すでに働いた労働に対する賃金の支払いを受けることが可能です。
- 出産
- 疾病
- 災害
- 結婚
- 死亡
- やむを得ない理由による1週間以上の帰郷
上記の事態で、どうしてもお金が必要な場合は、非常時払をご検討ください。
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