健康保険・療養の給付とは?一部負担金だけで私傷病の治療を受けられる
ケガや病気は誰にでも降りかかる災いであり、しかも、いつ起こるか分かりません。
何の保障もなければ、肉体的にも、精神的にも、経済的にも追い込まれる可能性があるでしょう。
しかし、日本は、国民一人一人が助け合う相互扶助の考えの基に国民皆保険制度が導入されているため、全ての国民が安心して治療等を受けられます。
そして、『療養の給付』は、私傷病に対して支給され、一番馴染みのある保険給付なのです。
健康保険・療養の給付とは?
『療養の給付』と聞くと、なんだか難しそうなイメージを持ちますが、『療養の給付』とは、プライベートのケガや病気により、病院等で治療を受けた時に支給される保険給付です。
例えば、休日に山登りをしていて骨折した場合や風邪をひいて病院で診察してもらった場合などがこれに該当します。
つまり、誰でも人生で何度かは病院を利用しているので、普通にこの『療養の給付』を受けているのです。
ただ、説明がないから知らずに利用しているというわけです。
ここで注意が必要なのは、「プライベートのケガや病気(私傷病)」でなければならず、業務上のケガ・病気の場合は労災保険等の適用を受けます。
療養の給付の種類
『療養の給付』は、次の5種類です。
- 診察
- 薬剤または治療材料の支給
- 処置、手術その他の治療
- 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
- 病院または診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
病院での治療の他、医師の処方箋に基づく保険薬局での薬剤の調剤、療養に伴う世話等も含まれています。
ただし、食事療養、生活療養、高度医療技術を用いた評価療養、特別な病室の提供などの選定療養については、『療養の給付』に含まれません。
療養の給付を受けられる人
『療養の給付』は、健康保険・国民健康保険の保険給付です。
健康保険は、会社員の私傷病に対する保険制度であり、その被保険者に加えて扶養に入っている家族も『療養の給付』を受けられます。
そして、国民健康保険は、自営業者や無職者等に対する保険制度であり、被扶養者という概念がないため、条件に該当する家族も被保険者として加入しなけらばなりません。
ただし、公務員や私学教職員、船員も、それぞれ加入している医療保険制度で、『療養の給付』を受けられるようになっています。
療養の給付を受けられる病院・診療所・薬局
『療養の給付』を受けられるのは、厚生局長から指定を受けた病院・診療所、地方厚生局長から指定を受けた薬局に限られます。
どこの病院でも良いというわけではないので、注意してください。
ただし、緊急でやむを得ない場合は、自費で治療等を受けた後、療養費の支給を受けられます。
療養の給付の受け方
『療養の給付』の支給を受ける場合は、健康保険証等を病院に提出してください。
病院が『療養の給付』を受ける資格があるか確認し、あると認められた場合は、治療費が一部負担金のみで済みます。
つまり、残りの部分が『療養の給付』として現物給付されるのです。
療養の給付の一部負担金
『療養の給付』は、無料で治療を受けられるのではなく、その何割かを負担しなければなりません。
それが、一部負担金であり、医療保険制度や年齢、所得といった条件よって、次のように負担割合が異なります。
健康保険『療養の給付』の一部負担金
0歳~就学前 | 2割負担 |
---|---|
小学校入学~69歳 | 3割負担 |
70歳以上 | 2割負担(現役並み所得者は3割) |
国民健康保険『療養の給付』の一部負担金
小学校入学前 | 2割 |
---|---|
小学校入学~69歳 | 3割 |
70歳~74歳 | ・1割負担(昭和19年4月1日までに生まれた方) ・2割負担(昭和19年4月2日以降に生まれた方) ・3割負担(現役並み所得者) |
75歳以上の方は、国保の資格を喪失し、後期高齢者医療制度に加入しなければなりません。
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